ヘリテイジから発表になった Mk1 ボディシェル。
2月の末にコラムをアップしたところ、先週末 早速に多くの方から質問が寄せられました。

「具体的にどんな代物なのか。」
「オリジナルとの違いは?」

2番目の質問はいろいろな見解がある、ということをあらかじめ断っておきたいと思います。
グレイスでは、車体の傷みの激しさ故に作業の大変難しい Mk1 / 2 を何台となくレストアしてきました。
その中には、傷んだ箇所をを取り除いていくと、ミニのボディの要になる部位(これらは年代ごとに材質等、
ハッキリとした違いがあります)バルクヘッド・クロスメンバー・ルーフパネルとピラーの一部しか残らなかった
ことがあります。
仕方のないことですが、再現すればするほどオリジナル(そもそももうグスグスなので)なのか、という部分に疑問を
唱える考え方もありますが、車がスピードを伴う道具がある以上ボディのコンディションにオリジナルを追求するのは筋が違うと考えます。

さて、New シェルのこと。
このボディシェルは、ヘリテイジにはない多くの Mk1 パネルが使われて組み上がっています。
補われているのは、M MACHINE のボディパネル。M-MACHINE には私も、30年来お世話になっています。
老舗とはいえメーカーレベルの規模には程遠く、品質にも限界があります。
例えば材質、これはプレス機との兼ね合いもあります。
ただつけたのではオリジナルのサイドシルの湾曲は出せないので、グレイスではフィッティングのために大きくストレッチングを施します。
それを怠ると、ドアの閉まり具合やリヤウイングの外観そのものにも影響を及ぼします。
オリジナルのフロアパネルはワンプレスですが、そんなものとてもとてもできないので、3ピース構成です。
合わせしろの強度を保とうとすると、フロアのくぼみ部の形状が若干変わってしまいます。

先日、私が作業中の Mk1 の傍に、90年代のミニがありました。
並んで比べてみると、同じミニでもルーフパネルの形状など大きく違うのがわかります。
旧型のほうがルーフがフラットで、違いの元はこれまで述べたようにプレスの違いにあります。
取付寸法は同じであっても、材料の質の違いからたち具合がだいぶ変わります。
致し方のないことですが、今回販売の始まるMk1 シェルは、その構成パネルの多くが Rover のミニのもの。
ピラー、インナー部やダッシュ廻りは人めでそうとわかります。
デフロスターの位置は、Mk1 のそれとは全く違うのです。
Mk1 / 2 の最大の特徴とも言える、1枚もののサイドパネルはどうしたのか?
リヤフロアパネル、リヤコンパニオンボックスは?バルクヘッドは?
言うまでもないことですが、オリジナルの通りとはいきません。
でも、それでも仕方のないことだと思います。

確かに、いつかはオリジナルに忠実なものを共思いますが、入手できるもの等の制約で、非常に難しいのが現実。
この New シェルは、わずか1万ポンドで買えるんです。
どうでしょう?レストアにかかるコストの何%でしょうね…

だからこそ、前回のコラムにも記したように “使い方”  なんです。
たとえ New シェルがあったところで、Mk1 のレプリカを仕上げるためにどれ明けのパーツが必要か?
MGB やスプリジェットのケースと同じです。
ドナーがないと、臓物を揃えるのは至難の技であると同時に、コストが逆にかさむでしょう。
この辺りから、このシェルの使い道としては、本当にボディの傷みが酷くて深刻で、そんな個体を魚見がえらせるにあたり
かけられるコストが限定的である場合に、というのはどうでしょう。
ボディが新品組みたてであるということで、『走って曲がって止まる』自動車としての基本動作を受け止める骨格としては
若くて瑞々しい?ものであることは折り紙つきです。
こんな使い方だと、とても有益に思います。

さて、では私が携わるモータースポーツのフィールドに於いては、どうでしょう。
YES であり、NO でもあります。
そもそも私の競技活動は、グレイスで手がけるボディワーク/メカニカルワークの耐久性/安全性などをテストするために
続けているわけで、その点からすれば NO 。
しかし、モータースポーツのコストを下げる、多くの人に安全に、そして比較的安価で楽しめることを提案するために
活用する、そう考えると YES です。

結論。
経験を積んで、歴史への敬意を払うことと学びを怠らず、都度塾考して使うことに尽きます。
ミニ・エンスージャストとして、強くそう思います。
有益に活用されることを願ってやみません。