私事ではありますが、今年よりラリーのコ・ドライバーを変更することになりました。
大きな決断ではありましたが、なぜこのような決断に至ったか、思うところを記してみます。
キャリアを積んで、年を重ねて、経験を踏まえて変わっていくんです。
…こんな風に書くとカッコよく聞こえるかもしれませんが、端的に言うとズバリ『老い』なんです。
1989年に始めた海外ラリー。
1999 / 2000年に WRC に出てひと区切りつけるまでは、未知、飛躍、走り方含め全力で挑戦の連続。
とにかくがむしゃらに、無我夢中で Try & Error を繰り返し、やり散らかしたかと思い悩んだ
こともありました。
充電を経て体制を整え2009年、長く親しんだ相棒と再開。
そこで感じたこと…善し悪しの問題ではなく、全く過去の感覚と違うということでした。
その感覚が何なのか?検証して行き着いた結論、それは時間がもたらしたもの『年齢』でした。
実にシンプルなことでした。
老いが迫ってきたのです。
これまでと同じようにはいかない自分を感じました。
折しもちょうど50歳、50歳での復活劇に刺激されて新しいクルーが誕生しました。
彼らともまだまだ共に歩みたい。
そう思った時、さぁどうしたら続けていけるのか?
まずは老いを自覚して、その時々のキャパシティに合わせて計画を立てる必要がありましょう。
   ・どう展開したいか     ・一番の目標は何か
   ・どう、生きたいか
モータースポーツを長く続けていくには、自らがこの部分をハッキリ意識する必要があります。
ラリーはレースとは大きく異なり同乗している人間が居ます。
殊ステージラリーは命を預け合う訳ですから、競技以前の心得として互いの命を守ることが第一です。
二者にコミュニケーションが欠かせないことはむろんです。
加齢に由る何というか『違和感』を抱えたながらも、キャリアを活かして試行錯誤を重ねれば、
若い頃と同じスタンスで続けることもできるかもしれません。
互いにハツラツとした壮年期を知っているだけに、どうしてもそこへ照準を合わせたくなるのは必定。
でも老いが水を差し無理しがちとなり、すんなりと思ったようになる訳もなく。
リスクは当然上がります。
そして何より、目的や目指すものがそのスタンスに沿っているかは、よく考えるべきでしょう。
私はプロのドライバーではありません。
今の私は車両テストをするメカニックとしてだけでなく、いろいろな人に楽しみ方や夢を提示するという
立場にあります。
こうした観点からしても、無茶をするスタイルは好ましくありません。
私はミニと同い年ですから、あと数年もすれば60歳を迎えます。
やりまくってメタメタになる前に、これまでのキャリアを棒に振らない為にも己を知って大きく切り替える、今がその時と思い至りました。
今、それが思い切れれば、もっともっと細く長く続けられるでしょう。
世界的に見ても息の長いクルーの中には、パートナーをコ・ドライバーに選んでいる人はたくさんいます。
今になれば、その組み合わせの理由がよくわかります。
自分にとって妻は、生活だけでなく仕事も共にしています。
ロードラリーでもクルーを組んで久しく、モータースポーツへの理解も深い人間です。
何といっても、日常に於いて私の老いを具に理解してくれている相手です。
ですから彼女と組むことで、老いにまつわるストレスは極端に減るでしょう。
技術的に不足する部分は多々あるでしょうが、それは先刻承知。
互いが互いを上手くコントロールできると確信しています。
老いをおそれずに、上手に続けていくに最も単純明快な方法です。
もしかしたら、競技的な色は薄らいでいくかもしれません。
でもそれも変化の一。
自らも変化しているのですから、目指す方向が変わっていくこともあるでしょう。
きっと内容も深くなり、発展していくであろうと期待を抱いています。
続けるということは非常にエネルギの要ることで、これまでにも想定内/外 様々なことが起こり、
都度選択を迫られ決断する、こんな経験を重ねてきました。
いろんなことがありましたが、いわゆる円熟期へ向かおうというこれから、大切なのは自分の老いとの
バランスを取っていくこと、これが長く続ける秘訣になる気がしています。
自分が一番判っていることですが、故に認めて受け入れることが難しいこともあるのが『老い』。
今の私は老いるということに直面し、きちんと向き合って考えるべき時が来ています。
虚勢を張らずに自然体で。
一番難しい、でも一番簡単な選択をしようと決めました。
もうこの仕事に携わって36年が経ちました。
人生の7割近く…時間が随分経っているんです。
いつまでも同じではいけないでしょう、年を重ねて成長したと思いたいところです。
『スローライフ』なんて流行り言葉があります。
余分なものを取り去ってシンプルにいく、ということでしょうか。
人からみればせわしくて、とてもスローではないんでしょうが、私の中では大きくそちらへ舵を切る
選択をしました。
見守って頂けたら幸いです。
最後に、これまで私のメチャクチャにつきあってくれた溝井くんに、この場を借りて感謝申し上げます。
彼のこれからに、これまで2人で経験してきたラリーの何かが役に立てば、これに勝る喜びはありません。

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