ただの思いつきや、商売だけで始める訳ではありません。
GRACE で扱うには当然理由があります。

幼い頃に心に決めた英車 MINI 、42年前に車の仕事を始めて1986年(26歳)の独立開業以来、車のお世話はもとより国内外で様々な仕様の車両製作や競技・開発など活動してきました。
生まれた国へ身を投じ、環境を知ったことはいろいろな意味で深く学ぶ助けになったと思います。
技術が発展の途上にある中で、車を作り出すのはさぞ知恵も工夫も要ったことでしょう。
国の違い、環境の違い、得意不得意、国民性…生まれてくる車も様々でした。
技術.意匠、個性に溢れていました。
数ある中から幼いころの私は、50〜60年代の英国車に惹かれていきました。
とりわけ MINI は飛び抜けた個性でした。
大柄な英国人がなぜゆえにあんなに小さい車を作ったのか。
しかも既存の車をベース(Morris Minor)に、どうしたらこうも違う車が生まれるんだろう…
いつも答えを探しながら MINI に携わってきました。

そんな中、活動の幅を海外にまで広げたことで私にはウソのような数々の幸運が訪れました。
当時の MINI に携わった多くの人たち…歴史を刻んできたレジェンド達と、主に競技のフィールドを通して関わりを持つ機会に恵まれたのです。
当時を知るワ−クスドライバーらと袖触れ合った経験は、まさに私の宝です。
おそらく私から MINI をとったら、何も残らないでしょう…

そんな私が、どうして FIAT?

私には、独立開業する前に数年間、クラシックカー全般を扱うガレージで仕事をした時期があります。
その頃から 500(Cinquecento)はたくさん触っています。
英国へ渡るようになってからも、現地で出くわすことが多々ありました。
ラリーを始めてからは、500・600・127 や 128 などとも関わるチャンスがありました。
そんな経験の中で 500 は、何故か私の頭の中から消えない車でした。
知れば知るほど、車の成り立ちと言いコンセプトといい世の中における立ち位置といい、MINI と 500 は同じ方向を向いている車だということに気付きました。
生まれた国は、ともに考え方がアグレッシブ。
小さい車を作るにあたり、贅沢は不要なので極限まで省いて。
BMC も FIAT も、企業の持つテクニックの粋を小さい車に凝縮…
シンプルで様々削ぎ落としたハズが結果、「贅沢」な「小さい」車がイギリスとイタリアで出来上がりました。
国民性や風土・環境の差が、この2台の個性の違いでありましょう。
名車と呼ぶに相応しいこの2台は、誕生から半世紀を過ぎた今でも生まれた国を象徴するいわばアイコンとして、国民から愛され続け、また優れた車として走り続けています。
残念ながら日本にはない傾向ですが、車の文化・歴史に照らして残るべきと評価される車の部品は、生産が続いており入手が可能です。
MINI も、500 ももちろん入手可、道具として安全に走る続けることもできるのです。
私が触る車、お客様にお勧め出来る車の条件は、部品の供給が潤沢にあること。

ここ数年、別件で部品生産などの視察にイタリアに出向くようになり、自分がかつて MINI と向き合った時と同様に生まれ故郷で背景や現状を実感する機会を得ました。
描いていたおぼろげな予感は、確信に変わりました。

グレイスで扱うに足る車だ、私たちが手がけることで「もっと引き出せる」。

折しも私こと店主は、昨年還暦を迎えました。
この先、何がどれだけいつまでできるだろう…ヒントを探してこれ迄の歩みをじっくり振り返りました。
ゴールの方が当然近いし、いわゆる『盛り』も過ぎてしまっていることも承知しています。
この先できることが限られていることも理解しています。
「やり残したことはないか」考えました。
もちろんたくさんあります!若い頃から描いてきた夢や目標、たくさんありました。
どう実現するか、掘り下げて深く追求するために1992年、英車全般から取り扱いを大幅に減らし MINI にフォーカスしました。
ラリーで往年の BMC 関係者と交流する幸運に数多く恵まれたのは前述の通りですが、そんな彼らに私の組んだ MINI は一定の評価をしてもらえるようになりました。
認めてもらえたんだろうか…1人また1人とお世話になった人たちは他界してしまったので改めて確かめる術はありませんが…でもそう思いたい。

さぁこの先。
私の生涯の相棒である MINI との関わりは、いよいよラストスパートに突入です。
何せ付き合い長いので、今更ブレることもなければスローダウンもありません。
で、「やり残したこと」。
頭の片隅にずっとある 500 へのパッション。
”グレイス”の屋号に込める我々の想い…『良さを引き出しより良くする』できると思います。
MINI と打ち消し合うこともなく、むしろ引き立てあって共存できる存在になると思っています、

コロナ渦の中、数台がイタリアからやってきました。
MINI と変わらないサービスを提供できるよう、環境の整備中。
グレイスの新たな挑戦に、興味を持っていただけたら嬉しいです。