(広告に掲載されている商品車等の情報は、2006年当時のものです)

ー 実体験から見出す車の方向性 ー

前号までの話で、車の性能に大きく影響するボディワークの重要性を、ご理解頂けたと思います。そこで今回は視点を少し変えて、車に求める目的について話を進めていきたいと思います。
再三申し上げてきた通り、ミニ(車)は人間の生み出した道具です。使えなければ道具として意味をなしません。車が道具である以上、全くのナンセンスです。そして車を扱うプロとしては、有効に使える車をユーザーに提供できない業者はプロとして失格です。私たちはプロとして、あらゆる目的・使用頻度を考慮に入れてミニを理解している必要があります。理解を深めるためには、様々な方法で毎日普段の足として使ったり、行き帰り自走してサーキットで半日走ったり、クラブラリーでステージやテストをこなしながら1日 300km 程度走ってきたりーーミニを使い、ミニを使い、過程・結果・対策・結論の全てをデータとして持っていなければなりません。経験から得たデータは何よりの根拠となります。失敗も時には貴重なデータです。

同時にメカニックにはある程度、少なくとも人並み以上の運転技術が必要です。日本ではあまりこだわりませんが、ヨーロッパでは常識です。究極の例は、ワークスラリーチームやレーシングチームのメカニックたちの運転技術です。契約ドライバーほど安定したものはありませんが、テスト走行など必要な時は同等のタイムを出すテクニックを身につけています。だからこそマシンは改良され、進化していくのです。僭越ながら私も、そうした姿勢で10年に渡り年1度の海外ラリー参戦を積み重ね、日々のメンテナンスにフィードバックしてきました。ミニはまさにラリーシーンでそのキャラクターが120%発揮され、さらなる進化を遂げた車です。英国ラリーへの参戦は、技術的なデータを得るにとどまらず、その生い立ちや時代背景など、周辺のことを知る貴重な機会となりました。

データと腕、私の考えるプロの条件です。つまり…愛車の面倒を見てもらう店を探すとき、1つの目安になると思います。その店のボスの車に乗せてもらうこと、常識的に考えてボスの車が一番であるはずなので、車の作りや運転から店のレベルや追求の度合いが量れると思います。

さて、ユーザーの目的にあった仕様を提案・提供する、そこで施すべきはチューニングです。チューニングというとエンジンの強化のようにとらえがちですが、元の意味からもわかるように『調子を合わせること』楽器でも使いますよね。一番バランスのいいところへ合わせてあげる、これがチューニングです。加速等の性能を得ることもしかり、必ずしもエンジンのモディファイだけではありません。加速性能向上の第一歩は、まず適切なギヤリングです。高年式のミニを例に、具体的な数字を見ながら考えてみます。

英国ではモーターウェイなど高速域でそうこうするさいのスピードは、150km/h 程度が一般的です。そんな道路事情にあって、4速ミッションのママ作り続けられたミニは、最終減速比(ファイナルレシオ)をあげるしか方法がありませんでした。12インチ化に伴い、トルクは10インチのそれより細くなっており、加えてファイナルの高速化。そのまま持ってきても、異常なまでの発進・停止を繰り返し速度域もだいぶ低いここ日本で、会長に走れる道理がありません。旧いミイNなどが日本の高速道路で 100km/h 巡行で走ると 3,500 rpm(回転)くらい。しかし1.3i モデルになると、せいぜい 3,200rpm どまりです。これでは  Aタイプエンジンのトルクバンドに入りません。いつも加速モードを迫られる日本の道路、そうしたシチュエーションに合わせる為に、少しファイナルを低速型に落としてセッティングしてあげると走りも安定、スムーズな加速も得られ、トルクバンドで車を操れるので燃費も向上する…いいことづくめです。

ミニの英国での事情を知り、経験に基づいた理論に沿って問題を分析し、バランスを取っていく、オーナーの目的に合った使用に落ち着かせる…スペシャリストの役目です。ここで気を付けなければいけないのが『過剰』いわゆるやり過ぎです。いつでもノーマルを念頭に、技術の進化や部品・素材の変化を計算に入れて施すことです。ここでも必要とされるのはやはり知識と経験、そしてデータです。

ミニは使い捨ての現代車とは違う、歴史に残っていく車です。正しい姿で構成に伝わっていくべき車を、偶々手にした人間がいたずらにありもしない形や仕様に返信させていくのは許されざる行為です。よく私たちは、ミニのことを『オーナーに託されたバトン』と形容します。縁あってオーナーの元にやってきた名車ミニを、車として使いこなし、自分の手を離れる時には本来の姿『車』のまま次へ継ぐ、それがオーナーの、ミニを所有する悦びに伴う義務ではないかと思います。そして私たちの立場は、プロとしてそのお手伝いをすることです。コンディション良く保つのはもちろんのこと、時にオーナーが思い入れ余って『過剰』に走ってしまわないよう、オリジナル・素性を良く知ってアドバイスすることも必要です。それは積み重ねてやった人でしか知りえないし、できません。私たちは本質的なミニを提供し続けます。決しておもちゃではに、同右として伝えて且つ楽しいミニ。乗って感じてください。