(広告に掲載されている商品車等の情報は、2007年当時のものです)

この広告が載された前年の夏、創業から20年の2006年8月にグレイスはバス停1つ分、引っ越しました。
看板屋の建物をそのまま使ったので、当初は天井が高く(=灯りも遠い)不便した覚えがあります。
やや経ってフロアを増設、2階もストック+作業場所という今のスタイルになりました。

 目的を持つ

私たちがミニを触るにあたっていつも心がけていること、それは「目的をハッキリさせる」ということです。道具という本来の姿を保つ為…メカニックとして基本中の基本ですが、…その為にはまず車の生い立ちや素性をよく知る必要があります。そして道具というものは使う側によって要求も様々、そんなリクエストに的確に答えていくには、数多くの事例をデータとして持ち且つドライビングのテクニックも長けていなければなりません。普段使いから競技活動まで、スタッフにとどまらず家族もミニを使いリサーチしています。こうした積み重ねは実体験データとしてとても有益なものです。車両を酷使する、岩ば究極の使い方とも言える競技、レースやラリーも同様です。私自身、若いころたしなみとして挑戦した二輪のプロダクションレースに始まった競技活動は、一度たりともライダー・ドライバーとして「勝つこと」を目的として続けてきた訳ではありません。メカニックとして、ミニのスペシャルショップとして、技を磨いたりデータを取ったり。私にとってリザルトはそれに伴う副産物でしかありません。こうした経験を積むことで、ミニの歴史や素性についてより理解を深めることができ、結果私自身も本質を見失うことなく日々ミニに携わることができています。何を目的にするかで、当然成果も大きく変わってしまうのです。

ミニに変わらず車はヨーロッパの文化です。とりわけミニは半世紀近くに渡って生産された車の中でも特異な車です。そのような車を扱う私たちが、積極的な事柄にとどまらずもっと深い意味で理解を深める為には、生い立ちや時代背景等も知っておく必要がありましょう。それにはその文化の生活圏にとび込んで、そこから学ぶことが一番の近道です。…むしろ他には道はないと言った方が適切かもしれません。私たちの渡英にはそうした目的があります。観光や買い付けだけで行くのではありません。私が続けてきた、そしてこれからも続けていくこのスタイルには目的があるのです。

車はそもそもヨーロッパの文化、と申し上げました。何事に於いてもそうですが、学ぶにあたりまずは真似るところから始めますね。学の旧字体『學』の中央の × 2つのうち 上は先生のお手本、下が生徒が真似て描いたもの、と言われていますし『真似る』は字のごとく真に似せることであります。忠実に真似ることができて初めて、アレンジもできるというものです。ですから、例えばミニのオリジナルを無視しての部品開発など私にとってはもってのほか。それは己を忘れたただのうぬぼれでしかないと思っています。オリジナルの構造を保ち、その中の優れた部分をより引き出すのが私たちの目的であり、ミニのアイデンティティを奪うことは私達の仕事ではありません。

すなわちそれは、ミニではなくなってしまうのですから。

最後に私達のガレージの屋号『GRACE』に込めた新年についてお話します。ギリシャ神話の美の神であるグレイス神。美を表す代表的な言葉です。私はそこから派生した数多くの意味の中から「うちに秘める良さをより美しくする」と言う意味をとって自分のガレージを『GRACE』と名付けました。うちの美しさは見えるものではないが、それを引き出すことによってより美しいものになる、というのです。まさに私が目指すクルマ作りの姿がそこになりました。以来20年、また私自身28年、ミニの本質を自分の目的を見失わず、ここまで続けてきたつもりです。